岡山の歴史ある古民家に、全国からうつわ好きが押し寄せる場所があります。アートスペース油亀の代表を務める柏戸喜貴氏は、登山道具の専門家から工芸の世界へと転身した異色の経歴を持つ人物です。手のひらサイズの豆皿に無限の可能性を見出し、作家の情熱を使い手へと繋ぐその活動は、多くのメディアで注目を集めています。一見すると風変わりな屋号の由来や、執念とも言える古民家再生の歩み、そして誰をも虜にするカレーへの深いこだわり。情熱にあふれた彼の生き様と、日々の暮らしを劇的に変える豆皿の魅力を詳しく紹介します。
【この記事のポイント】
- 柏戸喜貴氏が登山用品店から工芸の世界へ転向した意外なきっかけ
- 築140年の空き家を再生させて「油亀」の屋号を継承した感動の背景
- 全国から70名以上の作家が集結する日本最大級の豆皿展の圧倒的な熱量
- カレー愛から生まれた独自のうつわ選びとメディアで絶賛された審美眼
豆皿の柏戸喜貴って何者か探る!「アートスペース油亀」代表の素顔
岡山県岡山市にある築140年の古民家ギャラリーを運営

岡山県岡山市北区出石町。後楽園のほど近く、旭川のほとりに位置するこのエリアは、戦火を免れた古い建物が今も軒を連ね、歩くだけで時代の息吹を感じられる情緒豊かな街並みが広がっています。この歴史の面影が色濃く残る一角で、ひときわ存在感を放っているのが「アートスペース油亀」です。
拠点を構える建物は、明治初期に建てられた築140年を超える重厚な古民家です。かつては油問屋として地域の人々に親しまれていましたが、時代とともにその役目を終え、一時は存続が危ぶまれるほどの状態でした。しかし、その建物が持つ力強さや細部に宿る美しさに惹かれた柏戸喜貴氏の手によって、息を吹き返すこととなりました。約1年という長い歳月をかけて丁寧に修復され、床板の一枚から柱の傷跡まで、先人たちの歩みが刻まれた記憶を大切に残しながら、現代のアートを包み込む柔らかな空間へと生まれ変わりました。
ここでは、ただうつわを並べて販売するだけの展示とは一線を画しています。畳の感触、窓から差し込む柔らかな光、そして古民家特有の木の香りが漂う中で、全国の作家たちが魂を込めて作り上げた作品と向き合うことができます。作り手の情熱やこだわりがダイレクトに伝わってくるような独特の空気感があり、その心地よさに惹きつけられるように、地元の愛好家だけでなく全国各地から多くのうつわファンが訪れています。暮らしに寄り添う道具としての温もりと、歴史ある建物が醸し出す静謐な時間が溶け合い、訪れるたびに新しい発見と安らぎを与えてくれる、まさに手仕事の聖地と呼ぶにふさわしい場所です。
1978年大阪府生まれの企画力に長けたイベントプロデューサー
1978年に大阪府で誕生した柏戸喜貴氏は、現在は岡山の地を拠点に活動していますが、その感性の原点は都市部での多様な経験にあります。単にモノを並べるだけの「展示会」という枠組みを超え、空間全体を使って一つの物語を紡ぎ出すような、卓越したプロデュース能力が各方面から高く評価されています。
その企画の最大の特徴は、訪れる人が「うつわのある暮らし」を具体的にイメージできる構成にあります。単に作家の作品を陳列するのではなく、例えば食卓のシーンや日々の何気ない休息の時間など、使い手の日常に寄り添ったテーマを設定することで、一つひとつの作品が持つ背景や物語を丁寧に引き出していきます。こうした独自の視点による提案は、従来の工芸ファンだけでなく、これまでうつわに触れてこなかった若い世代にも、新しいライフスタイルへの気づきを与えています。
作り手である作家と、使い手である生活者。その両者の間に立ち、双方の思いを繋ぐプロフェッショナルとして、常にワクワクするような体験を仕掛け続けています。一見すると伝統的で静かなうつわの世界に、エンターテインメント性と深い洞察力を持ち込むことで、うつわを通じた新しい価値観や喜びを社会に提案し続けています。
大学時代にサークル立ち上げを経験し企画の面白さに目覚める
学生時代の柏戸喜貴氏は、既成の枠組みに身を置くよりも、自らの手でゼロから何かを創り出すことに深い情熱を注いでいました。その象徴的なエピソードが、自ら新しいサークルを立ち上げた経験です。単に共通の趣味を楽しむ場を作るだけでなく、どうすれば人が集まり、どうすればその場がより活気づくのかを常に考え、実行に移していました。
このサークル運営を通じて、多くの人を巻き込み、一つの目標に向かって場を動かしていく「企画」という仕事の醍醐味に目覚めることになります。参加者が何を求めているのかを察知し、それに応える仕組みを構築する過程で、企画が持つ大きな影響力や、人が自然と集まってくる場所が持つ重要性を身をもって学びました。
当時のこうした試行錯誤や成功体験は、現在のギャラリー運営においても欠かせない礎となっています。アーティストの作品をただ静かに鑑賞するだけの場所ではなく、訪れるたびに新しい発見や驚きがある「アートスペース油亀」の独創的なイベント構成には、学生時代から磨き続けてきた「人を惹きつける企画力」が今も脈々と息づいています。
前職は登山用品メーカー「好日山荘」に勤務していた異色の経歴
大学を卒業した柏戸喜貴氏は、登山用品の専門店として全国的に知られる「好日山荘」へと入社しました。現在のアートや工芸の世界とは一見すると対極にあるようにも思えるアウトドア業界に身を置き、最前線のスタッフとしてキャリアを積んでいた時期があります。この異色のバックグラウンドこそが、現在のギャラリー運営における独自の視点を形作る重要な要素となりました。
登山用品の世界では、過酷な自然環境に耐えうる「機能性」と、極限まで無駄を削ぎ落とした「美しさ」が求められます。命を守る道具としての信頼性、そして使い心地を追求する中で、柏戸氏は物事の本質を見抜く目を養いました。店舗での勤務を通じて培われた、現場で起きていることや使い手のリアルな声を最も重視する「現場主義」の精神は、後のうつわ選びにも大きな影響を与えています。
「道具は使われてこそ価値がある」というアウトドア業界の考え方は、日々の食卓を支える「うつわ」にも共通しています。単に飾って眺めるための美術品としてではなく、日々の暮らしの中で手に馴染み、使い込まれることで美しさが増していく生活道具としての視点。その妥協なき機能美へのこだわりは、登山用品メーカーで本物の道具と向き合ってきた経験があるからこそ、より深みのあるものとして現在に活かされています。
赴任先の各地で作り手と出会い工芸品の世界へ引き込まれる
登山用品に携わる仕事を通じて、柏戸喜貴氏は全国各地の店舗やフィールドへと足を運ぶ日々を送っていました。その赴任先で出会ったのは、その土地の風土に根ざした伝統的な手仕事や、ひたむきに創作活動に打ち込む作家たちでした。各地の工房を巡る中で、地域ごとに異なる素材や技法、そしてそれらを守り続ける人々の熱意に触れ、少しずつ工芸が持つ奥深い魅力に引き込まれていくことになります。
特に大きな気づきとなったのは、厳しい自然環境から身を守るための登山道具と、日々の暮らしを支えるうつわとの間にある共通点でした。どちらも、極限まで使いやすさを追求した先に宿る「用の美」を備えています。機能性を突き詰めた道具が放つ独特の美しさに触れてきた柏戸氏にとって、作家が一つひとつ丁寧に作り上げるうつわもまた、生活を豊かに彩る究極の道具として映りました。
こうした各地での出会いを重ねるうちに、単なる趣味の範疇を超え、工芸の世界に対してより深い情熱を注ぐようになっていきました。その土地にしかない物語や、作家の指先から生み出される温度感。それらを一人でも多くの人に伝えたいという想いが、後のギャラリー運営という道を選ぶ大きな原動力となったのです。
祖父の代わりに「ぐい呑み」を選んでいた幼少期の原体験
柏戸喜貴氏がうつわの世界、とりわけ小さな器に心を惹かれるようになった背景には、幼い日の穏やかな家庭の風景があります。まだ物心がつくかつかないかという頃から、晩酌をこよなく愛する祖父のために、その日の気分に合わせた「ぐい呑み」を自ら選んで差し出すのが、日課のような習慣となっていました。
子供の小さな手にとって、ぐい呑みはちょうど収まりの良いサイズ感でした。陶器のざらりとした質感や、磁器のひんやりとした滑らかさ。掌を通じて伝わる土の温度や、一つひとつ異なる重みを肌で感じ取っていたこの経験は、言葉になる前の豊かな感覚として心に深く刻まれました。その日の酒の種類や祖父の様子を思い浮かべながら、棚に並ぶ数ある器から一品を選び抜くという行為は、柏戸氏にとって「うつわ選び」の原点ともいえる大切な時間でした。
こうした幼少期の何気ない日常が、後の「豆皿」という小さな宇宙への情熱へと繋がっています。手のひらの中で広がる無限の表現や、小さきものの中に凝縮された作家の技術に魅了される感性は、祖父の晩酌に寄り添い、小さな器を愛おしんでいたあの頃の記憶から、静かに、しかし力強く育まれていったものです。
お化け屋敷状態だった空き家を1年かけて再生させた執念
現在のアートスペース油亀が構える建物は、最初から今のような美しい姿をしていたわけではありません。柏戸喜貴氏がこの場所と出会った当初、そこは長らく手入れがされず、周囲からは「お化け屋敷」と揶揄されるほど荒れ果てた空き家でした。屋根は傷み、壁は崩れ落ち、一見すれば取り壊すほかないような状態でしたが、柏戸氏はその荒廃した姿の奥に眠る、140年以上の歴史が育んだ揺るぎない品格と美しさを見抜いていました。
この建物を再び人が集う場所へと蘇らせるため、約1年にも及ぶ気の遠くなるような修復作業が始まりました。単に新しく作り直すのではなく、可能な限り元の部材を活かし、建物が刻んできた時間の記憶を損なわないよう、細心の注意を払いながら作業は進められました。専門の職人の手を借りるだけでなく、柏戸氏自身も現場に立ち、埃にまみれながら床板を磨き、壁を塗り直すなど、自らの手で一つひとつの工程に命を吹き込んでいきました。
その歩みはまさに、執念とも呼べるほどの情熱に支えられたものでした。崩れかけた古民家が、修復を経て凛とした空気の漂うギャラリーへと再生していく過程は、古いものに新しい価値を見出す柏戸氏の活動そのものを象徴しています。そうして蘇った空間は、今では作家の情熱を伝える器となり、訪れる人々を優しく迎え入れる温かな場所として、新たな歴史を刻み続けています。
奥様の祖父が営んでいた元油問屋の屋号を継承した背景
「アートスペース油亀」という、一度耳にすると忘れられない印象的な名称。この言葉の背景には、この場所で積み重ねられてきた商いの歴史と、家族の絆を大切に想う柏戸喜貴氏の深い敬意が込められています。「油亀」という名は、もともと奥様の祖父が代々受け継ぎ、この建物で営んでいた油問屋の屋号でした。
かつてこの場所は、地域の暮らしを支える油が絶え間なく行き交い、人々の活気にあふれた商いの中心地でした。しかし、時代の移り変わりとともに問屋としての役目を終え、屋号が記された看板も役目を譲る時が訪れます。柏戸氏は、この建物が再生され、新しい息吹を吹き込まれるにあたって、かつてここで懸命に生きた先人たちの誇りや、地域に根ざしてきた商売の記憶を消し去りたくないと考えました。
あえて古い屋号をそのままギャラリーの名前に冠したことは、単なる名前の継承以上の意味を持っています。それは、この土地で育まれてきた歴史を地層のように大切に積み上げ、その上に現代のアートや工芸という新しい価値を重ねていくという、柏戸氏の決意の表れでもあります。かつて油を商い、人々の生活を照らしてきた「油亀」は、今、うつわを通して人々の心に豊かさを届ける場所へと姿を変え、新たな物語を紡ぎ続けています。
豆皿の柏戸喜貴って何者?豆皿だけのうつわ展を仕掛ける情熱
全国から60名以上の作家が集結する日本最大級の展示会を主催

毎年恒例となっている「豆皿だけのうつわ展」は、アートスペース油亀が主催する企画展の中でも圧倒的な規模と人気を誇っています。北は北海道から南は沖縄まで、日本各地で活動する気鋭の作家たちがこの展示会のために情熱を注ぎ、一堂に作品が集結する様子は、まさに国内最大級のうつわの祭典と呼ぶにふさわしい光景です。
展示される作品数は年を追うごとにその充実ぶりを増しており、時には数千点、直近では8,000点を超える膨大な数の豆皿が会場を埋め尽くすこともあります。参加する作家の顔ぶれも多彩で、陶磁器はもちろんのこと、ガラスや漆、木工など、異なる素材や技法を操る70名以上の作り手が名を連ね、手のひらサイズの小さな器にそれぞれの美学を凝縮させています。これほどまでに多くの、そして質の高い作家たちと強固な信頼関係を築き上げ、大規模な展覧会を継続して実現させている柏戸喜貴氏の手腕は、工芸界からも非常に高く評価されています。
会場に一歩足を踏み入れれば、そこには数えきれないほどの「小宇宙」が広がっています。一つひとつ表情の異なる豆皿を手に取り、作家の息遣いを感じながら自分だけの一枚を探し出す体験は、訪れる人々にとって格別な喜びとなっています。全国の才能ある作り手たちの「今」を切り取り、一つの場所に集めて提示するこの試みは、うつわを通じた文化の発信地として、全国から多くのファンを惹きつけてやみません。
小さいからこそ使い手の想像力を広げる小宇宙としての価値
手のひらにすっぽりと収まる数センチの「豆皿」。柏戸喜貴氏は、この小さな器を、作家の技術と遊び心が凝縮された無限の可能性を秘めた「小宇宙」であると捉えています。「小さいけど、すごいやつ。小さいから、すごいやつ。」という言葉を掲げ、豆皿が持つ底知れない力を発信し続けている背景には、小さきものへの深い敬意と信頼があります。
豆皿の最大の特徴は、その用途を一つに限定しない自由度の高さにあります。食卓で薬味や醤油を乗せるだけでなく、ある時はお気に入りのお菓子を少しだけ添えたり、またある時は大切なアクセサリーを置くためのトレイにしたりと、使い手のその時々の気分や発想次第で、役割が次々と変化していきます。時には、ただ棚に並べて眺めるだけで心が安らぐアートピースとしても機能します。一つの型にはまらない、使い手の想像力をどこまでも広げてくれる懐の深さこそが、豆皿という器が持つ本質的な美しさです。
形式にとらわれない柏戸氏の提案は、暮らしの中に「余白」を生み出します。数センチの小さなキャンバスに込められた作家の情熱を受け取り、それを自分の生活の中でどう活かすか。そんな小さな思索の時間が、日々の暮らしにささやかな豊かさと彩りをもたらしてくれます。自分だけの自由な使い方を見出す楽しみを尊重するその姿勢が、うつわを通じて自分らしい暮らしを育みたいと願う多くの人々の心に響き、強い共感の輪を広げています。
カレーや珈琲など特定の用途に特化したユニークな企画展の数々
豆皿の展示会と並んで、アートスペース油亀の代名詞ともいえるのが、一つのテーマを極限まで深掘りした特化型の企画展です。中でも「カレーのためのうつわ展」や「珈琲のための器展」は、全国のうつわファンの間で語り草になるほどの熱量を誇っています。これらの企画は、単に美しい皿を並べるのではなく、「最高のカレーを食べるにはどんな皿が必要か」「至福の一杯を淹れるためのカップとは何か」という、日常生活の具体的なワンシーンを豊かにすることに焦点を当てています。
「カレーのためのうつわ展」では、全国のカレーを愛してやまない作家たちが集結し、ルーの絡み具合や最後の一粒までのすくいやすさを追求した皿、さらには福神漬け専用の小皿や、辛さを和らげるためのラッシー用のカップまで、カレーにまつわるあらゆる道具を形にしています。また、「珈琲のための器展」では、柏戸喜貴氏自身が無類のコーヒー好きであることから、作家たちに「自分ならどんな器で飲みたいか」という問いを投げかけ、ドリッパーやサーバー、フィルター立てに至るまで、コーヒータイムを全方位から彩る作品が集められます。
こうした展示の魅力は、暮らしの中の「楽しさ」を具体的に提案してくれる点にあります。会場では実際のカレーが振る舞われたり、厳選されたコーヒー豆が販売されたりと、五感を使って体験できる工夫が凝らされています。うつわを通じて、普段の食卓や休憩の時間が特別なイベントへと変わるような、ワクワクするヒントが至る所に散りばめられています。何気ない日常の動作を大切に味わうきっかけをくれるこれらの企画展は、日々の生活を丁寧に営みたいと願う人々に、確かな充足感を届けています。
自ら全国の工房へ足を運び作家と直接交渉する妥協なき姿勢
柏戸喜貴氏がギャラリーに並べる作品を選ぶ際、最も大切にしているのは「現場の空気感」です。作品の仕入れにあたって、電話やメール、カタログといった便利な手段だけで済ませることはまずありません。北は北海道から南は沖縄まで、日本全国に点在する作家たちの工房へ自ら足を運び、直接顔を合わせて対話することを活動の鉄則としています。
工房を訪れる目的は、単に作品を確保することだけではありません。作家がどのような風土の中で暮らし、どんな光が差し込む工房で、どのような道具を使って粘土や素材と向き合っているのか。その制作背景にある「目に見えない物語」を自身の目で確かめるためです。作家が日々感じている葛藤や、作品に込めた細かなこだわりを肌で感じることで、初めてその作品の真の価値を理解できると考えています。
こうした徹底した現場主義は、作家との間に強固な信頼関係を築き上げてきました。「この人なら自分の作品を大切に届けてくれる」という作家側の安心感があるからこそ、他ではなかなか見ることのできない独創的な作品や、魂の込もった力作が油亀に集まってくるのです。一切の妥協を排し、自らの足で稼いで集められた作品の数々は、どれもが作り手の体温を感じさせるものばかり。この愚直なまでの情熱が、多くのうつわファンを惹きつけてやまない、質の高いラインナップを支える揺るぎない土台となっています。
使い手と作り手をつなぐ「ワクワクする空間」へのこだわり
アートスペース油亀において、ギャラリーという場所は単に作品を展示して販売するだけの店舗ではありません。そこは、訪れた人がまだ見ぬ表現と出会い、日常を忘れさせてくれるような「心が躍る体験」を提供する舞台でもあります。柏戸喜貴氏は、空間づくりにおいて、作品そのものの美しさを引き立てるだけでなく、訪れる人がワクワクするような高揚感を感じられる演出を何よりも大切にしています。
展示の至るところには、作家がどのような想いでその作品を形にしたのか、その背景を丁寧に紐解くための工夫が凝らされています。まるで作り手の息遣いが聞こえてくるような展示構成は、使い手である私たちが、作品を単なる「モノ」としてではなく、作家の魂や物語の一部として受け取ることを可能にしてくれます。作品を手に取った瞬間に伝わる温度感や、その器が自分の暮らしに加わった時の幸せな情景をイメージさせること。その橋渡しこそが、柏戸氏が自らに課した重要な役割です。
古民家という歴史ある空間と、現代の作家たちの感性が交差するこの場所には、言葉では言い尽くせない独特の熱量が漂っています。作り手の並々ならぬ情熱を、使い手の期待や喜びへと確実に繋いでいく。その真摯なこだわりによって、アートスペース油亀は、ただのギャラリーを超えて、多くの人々にとって「新しい自分や、豊かな暮らしのヒントに出会える場所」として親しまれ続けています。
オンライン通販でも手仕事の温もりを届ける最新の取り組み
岡山の実店舗だけでなく、アートスペース油亀では遠方に住む方々や、なかなか直接足を運ぶことが難しい状況にある人々のために、オンラインを通じた発信と販売に非常に力を入れています。web通販サイト「FUHENT(フヘント)」を軸に、全国どこにいても手仕事の温もりを感じ、作品を手に取ることができる仕組みを整えています。
ここでの取り組みが多くの支持を集めている理由は、画面越しであっても「作品の質感」や「作家の温度感」が驚くほど丁寧に伝えられている点にあります。単に作品の写真を掲載してスペックを説明するのではなく、柏戸喜貴氏が工房で感じ取った作家の想いや、そのうつわが暮らしの中でどのように育っていくのかといった、未来の物語までを添えて紹介しています。まるで実店舗で店主から直接説明を受けているような感覚になれるよう、言葉選び一つひとつにこだわり、作品が持つ独特の表情を多角的な視点で切り取っています。
特に人気を集めているのが、実店舗での企画展と連動して開催される「web通販展」です。展示の熱気が冷めないうちにオンラインでも作品が公開され、全国のファンが一斉にサイトを訪れるほどの盛況ぶりを見せています。また、SNSを活用したライブ配信や、作家へのインタビューなど、デジタルツールを駆使しながらも、その根底にあるのは「人の手が生み出したものを、大切に繋ぐ」というアナログで温かな姿勢です。時代に合わせた柔軟な形を取り入れつつ、一貫して手仕事への敬意を忘れない発信こそが、日本中のうつわ好きにとって頼もしい存在となっている理由です。
無類のスパイス好きが高じて生まれたカレー皿への深い造詣
柏戸喜貴氏が語るカレー皿の魅力には、単なるギャラリーオーナーとしての知識を超えた、圧倒的な説得力があります。その理由は、自身が「三食すべてカレーでも構わない」と公言するほどの熱狂的なスパイス料理愛好家であることに他なりません。自らスパイスを調合し、全国のカレーの名店を巡る中で培われた経験は、カレーを最も美味しく、美しく食べるためのうつわ選びへと直結しています。
柏戸氏が追求するカレー皿の条件は、非常に具体的で実践的です。例えば、複雑なスパイスの色味やオイルの質感が最も美しく映える色合い。最後の一粒、ルーの一滴までストレスなくすくい取れるような縁の立ち上がりや絶妙なカーブ。そして、スプーンが皿に当たった際に響く音の心地よさまで、実際に日々カレーを食す中で得られた細かな気づきが、作家へのオーダーやセレクトの基準となっています。
こうした「カレー愛」に基づいた深い造詣は、多くのカレーファンや料理人からも絶大な信頼を寄せられています。企画展では、ただ皿を並べるだけでなく、どの皿がさらさらとしたインド風カレーに向いているか、あるいは具だくさんの欧風カレーに合うのはどれかといった、具体的で愛着の持てる提案がなされます。作り手の技術と使い手の飽くなき探究心が交差する柏戸氏の視点は、日々の食事を単なる習慣から、五感をフルに活用して楽しむ至福の体験へと引き上げてくれます。
マツコ・デラックスにプレゼンした究極の逸品と選定基準
メディアを通じて広く紹介された柏戸喜貴氏による豆皿のプレゼンテーションは、多くの視聴者の心を捉えました。紹介された数々の豆皿は、どれもが手のひらサイズという制約の中に、作家の並々ならぬ情熱と技術がぎゅっと凝縮されたものばかりです。柏戸氏が選び抜く「究極の逸品」には、単に見た目が美しいというだけではない、明確な選定基準が存在しています。
その基準の根底にあるのは、作家の哲学がいかに作品に投影されているかという点です。長年にわたり全国の工房を巡り、数えきれないほどの作品をその手で確かめてきた経験から、柏戸氏は作品の背後にある「作り手の覚悟」を瞬時に見抜きます。例えば、一見するとシンプルな豆皿であっても、土の調合から釉薬のわずかな変化、そして焼成の温度に至るまで、作家がどのような「解」を求めてその形に辿り着いたのか。その一連のストーリーが宿っている作品こそが、彼の心を動かします。
また、使い手の生活にどのような変化をもたらすかという視点も欠かせません。料理を乗せた時にいかに食材を輝かせるか、あるいは部屋に置いた時にその場の空気をどう変えるかといった、実生活での機能性と芸術性のバランスを厳格に見極めています。膨大な数の作品を見てきたからこそ磨かれたその鋭い審美眼は、決して妥協を許しません。紹介される一点一点に込められた深い造詣と、作家への溢れんばかりの敬意。それらが一体となったプレゼンテーションは、豆皿という小さな存在が持つ大きな価値を、改めて世に知らしめることとなりました。
豆皿の柏戸喜貴って何者かを知るための活動実績と要点まとめ
- 岡山県岡山市にある築140年の古民家を再生しギャラリーを運営
- 大阪府出身で大学卒業後に大手登山用品メーカーの好日山荘に勤務
- 転勤先の各地で工芸品の作り手と出会い独自の感性を磨き上げた経歴
- 奥様の祖父が営んでいた油問屋の屋号を継承しアートスペース油亀を開設
- 全国から数十名の作家が集まる日本最大級の豆皿イベントを毎年主催
- 小さな器を小宇宙と捉えて日常生活における新たな価値観を常に提案
- 自ら全国各地の工房へ直接足を運び作家との信頼関係を築く現場主義
- 妥協のない作品選びと作り手の物語を丁寧に伝える熱量の高い展示手法
- 無類のカレー好きとして特定の料理を美味しく食べるための器を追求
- 画面越しでも手仕事の温もりが伝わる独自のオンライン通販サイトを構築
- メディア出演を通じて豆皿の深い歴史や作家の技術を全国へ広く発信
- 築140年の歴史を背負いながら現代のアートを融合させる空間プロデュース
- 道具としての機能美を重視し使い手の暮らしを豊かにする視点を重視
- 多彩なジャンルの作家と連携し独創的なテーマの企画展を次々と展開
- 手仕事の架け橋として作り手と使い手の双方から絶大な信頼を得る存在




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