映画『ラスト サムライ』で鮮烈なデビューを飾って以来、池松壮亮さんは日本映画界において独自の存在感を築いてきました。幼少期の舞台経験から始まり、東京芸術大学での学び、そしてホリプロ退所後の独立まで──その軌跡は、表現者としての誠実さと探究心に満ちています。
映像作品だけでなく、舞台や朗読劇、ナレーションなど多彩なジャンルに挑み続ける姿勢は、俳優という枠を超えた創作への情熱を感じさせます。この記事では、池松壮亮さんのこれまでの活動年表、代表作、演技への向き合い方、そして今後の出演予定までを丁寧に紐解いていきます。
【この記事のポイント】
- 池松壮亮さんの子役時代から現在までの活動年表と代表作
- 独立後の作品選びと表現スタイルの変化
- 舞台・ナレーションなど映像以外の活動への取り組み
- インタビューから見える演技哲学と役づくりへの姿勢
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池松壮亮のプロフィールと俳優としての軌跡
子役時代から現在までの活動年表
池松壮亮は1990年7月9日、福岡県に生まれました。幼少期から地元の劇団に所属し、舞台経験を積んでいたことが俳優としての出発点となっています。2001年、わずか11歳で映画『ラスト サムライ』に出演し、ハリウッド作品でのデビューを果たしました。この作品では、トム・クルーズ演じる主人公と深く関わる少年役を演じ、国際的な注目を集めました。
その後も映画『鉄人28号』や『リリイ・シュシュのすべて』などに出演し、10代のうちから映画界で確かな足跡を残しています。高校卒業後は、東京芸術大学に進学し、演劇を専門的に学びながら俳優活動を継続しました。学業と仕事を両立させる中で、映画『半分の月がのぼる空』や『愛の渦』など、挑戦的な作品にも積極的に参加しています。
20代に入ってからは、映画『紙の月』『海よりもまだ深く』『セトウツミ』などで印象的な役を演じ、演技力への評価が高まりました。特に『宮本から君へ』では、感情の振れ幅が大きい主人公を演じ切り、複数の映画賞を受賞しています。
30代に入ってからは、主演作が増え、作品選びにも独自の視点が感じられるようになりました。映画『本心』では、AIと人間の関係性を静かに描く役柄に挑み、深い余韻を残す演技が話題となりました。また、舞台や朗読劇、ナレーションなどにも積極的に取り組み、映像作品以外の表現にも力を注いでいます。
現在は独立して活動しており、事務所に縛られない自由なスタンスで作品に関わっています。俳優としての歩みは、常に内面と向き合いながら、表現の可能性を広げてきた軌跡といえます。
映画『ラスト サムライ』での初出演

池松壮亮が映画『ラスト サムライ』に出演したのは2003年、当時まだ中学生の頃でした。彼が演じたのは、渡辺謙が扮する武士・勝元盛次の息子・飛源役です。物語の中で飛源は、アメリカ人将校ネイサン・オールグレン(トム・クルーズ)と心を通わせる重要な存在として描かれています。
この作品は明治初期の日本を舞台に、武士の精神と西洋文化の衝突を描いた歴史ドラマであり、池松壮亮にとっては初の映画出演でありながら、ハリウッド作品という大舞台でのデビューとなりました。撮影はアメリカと日本で行われ、池松壮亮は英語のセリフにも挑戦しています。現場では、言葉の壁を越えて演技に集中する姿勢が印象的だったと語られています。
飛源という役柄は、父を尊敬しながらも、時代の変化に揺れる少年として描かれており、池松壮亮はその複雑な感情を繊細に表現しています。彼の演技は、物語の中でオールグレンが日本文化に心を開いていく過程に深く関わっており、観客の記憶にも残る存在となりました。
この出演をきっかけに、池松壮亮は国内外の映画関係者から注目されるようになり、以降の俳優人生において大きな転機となりました。初めての映画出演でありながら、国際的な作品で重要な役を任された経験は、彼の演技に対する姿勢や表現力に大きな影響を与えています。
学生時代と演技への向き合い方
池松壮亮は福岡県内の高校に通いながら、映画や舞台の出演を続けていました。10代の頃から演技に対する意識は高く、役に向き合う姿勢は非常に真摯でした。映画『鉄人28号』では主人公・金田正太郎役を演じ、アクションと感情表現の両面で注目を集めました。続いて出演した『リリイ・シュシュのすべて』では、思春期の揺れ動く心理を繊細に表現し、若手俳優としての存在感を示しています。
高校卒業後は東京芸術大学に進学し、演劇学科で専門的な学びを深めました。大学では舞台演出や身体表現など、理論と実践の両面から演技を探求しており、学業と俳優活動を並行して続ける生活を送っていました。授業の合間に撮影現場へ向かう日々の中で、役柄への理解を深めるための読書や対話を重視するようになったとされています。
演技に対する池松壮亮の姿勢は、常に内省的で、表面的な感情表現に頼ることなく、人物の内面に深く入り込むスタイルが特徴です。台本を読み込むだけでなく、役の背景や時代性、人間関係まで丁寧に掘り下げることで、演技に厚みを持たせています。現場では、共演者との距離感や空気を大切にしながら、自然な流れの中で感情を引き出すことを心がけています。
学生時代に培ったこの姿勢は、現在の演技にも通じており、どの作品においても一貫した深みのある表現が見られます。学びと経験を重ねながら、池松壮亮は俳優としての軸を確立していったといえます。
所属事務所の変遷と独立の背景

池松壮亮は長年にわたりホリプロに所属し、映画やドラマ、舞台など幅広いジャンルで活動してきました。俳優としての基盤を築いたこの期間には、数々の話題作に出演し、演技力を磨くとともに、作品選びにも独自の視点を持つようになりました。
2023年にホリプロを退所し、個人での活動を開始しています。退所の理由については明言されていませんが、俳優としての表現の幅を広げたいという思いが背景にあると考えられます。独立後は、映画『本心』や『ぼくのお日さま』など、企画性の高い作品への参加が目立ち、単なる出演者としてではなく、作品の構成やテーマに深く関わる姿勢が見られます。
また、インディペンデントな映画や舞台への出演も増え、商業性よりも表現の純度を重視する傾向が強まっています。演技に対する姿勢は以前から一貫して内省的で、役柄の背景や感情に丁寧に向き合うスタイルを貫いていますが、独立後はその姿勢がより鮮明になっています。
事務所に所属していた頃と比べて、作品の選び方や関わり方に自由度が増し、俳優としての個性がより際立つようになりました。現場では監督やスタッフとの対話を重視し、役づくりにおいても自ら提案を行うなど、創作の初期段階から積極的に関与する姿勢が定着しています。
池松壮亮の現在の活動は、俳優としての成熟とともに、表現者としての責任と自由を両立させる挑戦の連続といえます。
舞台・ナレーションなど多彩なジャンル
池松壮亮は映画やドラマにとどまらず、舞台、ナレーション、朗読劇など幅広い表現の場で活動しています。俳優としての原点が劇団四季のミュージカル『ライオン・キング』でのヤングシンバ役だったこともあり、舞台への思いは深く、映像とは異なる空気感の中での演技に強いこだわりを持っています。
舞台では、身体の動きと声の響きを丁寧に調整しながら、観客との距離感を意識した演技を心がけています。セリフの間や視線の使い方に細やかな工夫が見られ、空間全体を使って感情を伝えるスタイルが特徴です。特に小劇場での公演では、観客との一体感を重視した演技が印象的で、静かな場面でも緊張感を保つ力があります。
ナレーションや朗読劇にも積極的に取り組んでおり、声だけで物語を伝える表現にも力を注いでいます。人形劇『新・三銃士』では主人公ダルタニアンの声を担当し、キャラクターの感情を声の抑揚で表現する技術が高く評価されました。この作品では、顔のモデルにもなっており、演技とビジュアルの両面で深く関わっています。
また、ドキュメンタリー番組やラジオドラマでもナレーションを務めており、言葉の選び方や語りのテンポに独自の感性が感じられます。映像がない場面でも、聞き手の想像力を引き出す語り口が印象的で、静かな語りの中に強い情感が込められています。
これらの活動は、池松壮亮が俳優としての表現を映像だけに限定せず、言葉や身体を通じて多角的に追求している姿勢の表れです。ジャンルを越えて演じることで、作品ごとに異なる空気を生み出し、観る人・聴く人の記憶に残る演技を届けています。
受賞歴と評価された代表作

池松壮亮は、映画『紙の月』『海よりもまだ深く』『宮本から君へ』などで主演を務め、演技力の高さが広く認められています。それぞれの作品で異なる人物像を描きながら、感情の揺れや葛藤を丁寧に表現する力が評価され、数々の映画賞を受賞しています。
『紙の月』では、銀行員の女性と関係を持つ大学生役を演じ、物語の緊張感を支える存在として注目されました。この作品では、日本アカデミー賞新人俳優賞やブルーリボン賞助演男優賞などを受賞しています。若手ながらも成熟した演技が印象的で、観客の記憶に残る役柄となりました。
『海よりもまだ深く』では、夢を諦めきれない中年男を演じる阿部寛の弟役として出演し、家族の複雑な関係性を静かに支える演技が印象的でした。物語の中で多くを語らずとも、表情や間の使い方で人物の背景を伝える技術が光っています。
『宮本から君へ』では、情熱的で不器用な営業マン・宮本浩を演じ、激しい感情の爆発と繊細な内面の揺れを同時に表現しました。この作品はドラマ版から映画化されるまでに7年の歳月を要し、池松壮亮自身も企画段階から関わっていたことが知られています。映画版では、キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞やヨコハマ映画祭主演男優賞などを受賞し、俳優としての評価をさらに高めました。
これらの作品を通じて、池松壮亮は同世代の俳優の中でも独自の存在感を放つ存在となっています。派手な演技ではなく、静かな中に強さを秘めた表現が特徴で、観る人の心に深く残る演技を届けています。
家族構成と幼少期のエピソード
池松壮亮は福岡県福岡市で生まれ育ち、6人家族の中で三人兄弟の長男として過ごしました。父親はインテリア関連の会社を経営しており、母親は飲食店の運営経験があるなど、家庭は穏やかで文化的な環境に恵まれていました。姉は劇団四季に所属していた経験があり、妹は税理士として働いています。弟については一般人で詳細は公表されていませんが、家族全体がそれぞれの分野で活躍していることがうかがえます。
幼少期の池松壮亮は、内向的ながらも活発な性格で、外で遊ぶことやスポーツが好きな少年でした。特に野球に熱中しており、小学校時代には地元の少年野球チーム「長丘ファイターズ」に所属し、センターを守る中心選手として活躍していました。将来は野球選手になりたいという夢を持っていたほど、スポーツに対する情熱は強かったようです。
俳優としての原点は、10歳の頃に姉の影響で劇団四季のミュージカル『ライオン・キング』のオーディションを受けたことにあります。当初は人前に出ることが苦手だったものの、ヤングシンバ役に抜擢され、舞台に立つことで表現する楽しさを知るきっかけとなりました。この経験が、後の俳優活動へとつながる重要な一歩となっています。
家庭では読書や映画鑑賞を好み、静かな時間を大切にする一方で、外ではスポーツに打ち込むという二面性を持っていました。こうした幼少期の過ごし方が、現在の演技における繊細さと力強さの両立に影響を与えていると考えられます。
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池松壮亮が出演した近年の話題作と今後の予定
映画『本心』で描いた未来と人間性

映画『本心』は、平野啓一郎の同名小説を原作とした2025年公開の作品で、池松壮亮が主演を務めています。物語の舞台は、AIが人間の感情や記憶を再現する技術が発達した近未来。亡くなった人の人格を再構築する「パーソナル・オブジェクト」という技術が社会に浸透する中で、主人公は亡き恋人の再現体と向き合いながら、自身の記憶と感情を見つめ直していきます。
池松壮亮が演じる主人公は、静かな語り口と抑制された表情の中に、深い喪失感と再生への希望を抱えています。AIによって再現された恋人との対話は、現実と記憶の境界を揺さぶりながら、人間とは何か、心とは何かという問いを観る者に投げかけます。演技は極めて繊細で、言葉の少ない場面でも感情の流れが伝わるような空気をまとっています。
映像は静謐で美しく、未来的なテクノロジーと人間の感情が交錯する世界観が丁寧に描かれています。池松壮亮は、AIとの関係性を通じて人間の本質に迫る役柄を、過剰な演出に頼ることなく自然体で演じています。観客からは、物語の余韻の深さや、感情の揺らぎを丁寧に描いた演技に対して高い評価が寄せられています。
この作品は、池松壮亮が俳優としての成熟を示す一本であり、テクノロジーと人間性という普遍的なテーマを静かに、しかし力強く描いています。彼の演技は、未来を描く物語の中で、過去と現在をつなぐ感情の橋渡し役として機能しており、観る人の心に長く残る印象を与えています。
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』での役柄
映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』は、脱力系女子殺し屋コンビの活躍を描くシリーズの第3作で、池松壮亮は“史上最強の殺し屋”冬村かえで役として登場しています。彼が演じる冬村は、一匹狼で孤高の存在。日常生活ではテントの中で暮らし、日記をつけるという独特な生活スタイルを持ち、感情を表に出さない冷静な人物として描かれています。
登場時間は限られているものの、物語の中で非常に重要な位置を占めており、主人公コンビの前に立ちはだかる強敵として緊張感を生み出しています。アクションシーンでは、武術や武器の扱いに長けた達人としての動きが際立ち、池松壮亮の身体表現が存分に活かされています。これまでの作品では見られなかったアクション俳優としての一面が強く打ち出されており、観客に新鮮な印象を与えています。
冬村のキャラクターは、孤独と執念を抱えながらも、どこか人間的な弱さを感じさせる造形となっており、池松壮亮の演技によってその複雑さが丁寧に表現されています。彼が掲げる目標は「150人を殺す」という過激なものですが、その背景には達成すべき理由や過去があることが暗示されており、物語に深みを与えています。
主人公たちとの対決では、静かな緊張感が漂い、アクションの切れ味と心理的な駆け引きが交錯する場面が展開されます。池松壮亮の存在が、物語全体のバランスを引き締め、シリーズの中でも異質な空気を生み出しています。彼の演技は、単なる敵役にとどまらず、物語のテーマに厚みを加える役割を果たしています。
『ぼくのお日さま』で演じたコーチ像

映画『ぼくのお日さま』で池松壮亮が演じたのは、フィギュアスケートのコーチ・荒川という人物です。物語は、吃音を抱える少年タクヤと、フィギュアスケートに打ち込む少女さくらの出会いから始まり、荒川はその二人の関係を静かに見守りながら、指導者として寄り添っていきます。
荒川は、東京から北国の町にやってきたスケートコーチで、言葉数は少ないものの、子どもたちの感情に敏感に反応し、必要なときにそっと手を差し伸べる存在です。タクヤがホッケー靴のままフィギュアのステップを真似て転んでいる姿を見て、スケート靴を貸し、練習に付き合う場面では、荒川の優しさと柔らかなまなざしが印象的です。
池松壮亮の演技は、荒川の内面にある過去や孤独を感じさせながらも、子どもたちの成長を支える大人としての静かな強さを表現しています。劇中では“鬼コーチ”として振る舞う場面もありますが、それは子どもたちの可能性を引き出すための演出であり、実際には笑顔を交えた温かな関係性が築かれています。
荒川は、タクヤとさくらがペアを組んでアイスダンスに挑戦するきっかけを作る人物でもあり、物語の進行において重要な役割を担っています。スケートリンクという限られた空間の中で、光と静けさに包まれた時間を通して、子どもたちの心の変化を見守る姿は、観る者に深い余韻を残します。
池松壮亮は、荒川という役を通じて、言葉ではなく行動で伝える演技の力を示しています。彼の存在が、作品全体の空気感を支え、静かで温かい物語に深みを与えています。
NHKドラマ『昭和16年夏の敗戦』の見どころ
NHKスペシャルドラマ『昭和16年夏の敗戦』は、終戦80年の節目に放送された2夜連続の特別企画で、池松壮亮が主演を務めています。物語の舞台は1941年春、真珠湾攻撃の8か月前。日本政府が設立した「総力戦研究所」に集められた若きエリートたちが、日米開戦の可能性をシミュレートするという実話に基づいた構成です。
池松壮亮が演じるのは、産業組合中央金庫の調査課長・宇治田洋一。模擬内閣では内閣総理大臣に指名され、軍部の圧力や国民感情と向き合いながら、冷静に戦局を分析していきます。当初は軍への反感から消極的だった宇治田が、現実の厳しさに直面し「開戦を避けるべき」と動き出す姿が丁寧に描かれています。
ドラマの見どころは、若者たちが国家機密に触れながら、戦争の可能性を冷静に予測し、導き出した結論が「日本は必ず敗北する」という衝撃的なものであった点です。その結果を本物の内閣に報告する場面では、緊張感と覚悟が交錯し、池松壮亮の演技が物語の核心を支えています。
演出は石井裕也が担当し、映像は静かで力強く、登場人物たちの葛藤や決断が丁寧に描かれています。池松壮亮は、組織の中で揺れる個人の姿を通して、現代にも通じるテーマを浮かび上がらせています。戦争ドラマでありながら、意思決定の曖昧さや空気に流される危うさを描いた現代的な作品としても注目されています。
映画『THE オリバーな犬』の世界観

映画『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』は、2021年にNHKで放送されたドラマシリーズの世界観を引き継ぎながら、劇場版として新たなスケールで展開される作品です。池松壮亮が演じるのは、県警鑑識課警察犬係の警察官・青葉一平。彼の相棒である警察犬“オリバー”は、なぜか池松にだけは「犬の着ぐるみを着たおじさん」に見えるという奇抜な設定が物語の軸となっています。
この作品の世界観は、現実と幻想が入り混じる摩訶不思議な構造で、ナンセンスなユーモアとサスペンスが絶妙に交錯しています。監督・脚本・編集・出演を兼ねるオダギリジョーが創り出す空間は、日常の延長線上にあるようでいて、どこか異世界のような感覚を呼び起こします。登場人物たちは一見普通の警察官や市民でありながら、言動や設定がどこかズレていて、そのズレが物語のテンポと笑いを生み出しています。
池松壮亮の演技は、この奇妙な世界観の中で絶妙なバランスを保っています。真剣な表情で不可解な事件に向き合いながらも、相棒のオリバーとのやりとりには独特の間と空気があり、観客を物語に引き込む力があります。彼の演じる一平は、現実に立脚しながらも、幻想に触れてしまった人物として、物語の中で揺れ動く存在です。
映画版では、ドラマ版で描ききれなかったオリバーの過去や、一平の内面にも迫る展開が用意されており、より深い人間ドラマとしての側面も強まっています。また、佐藤浩市や永瀬正敏、深津絵里など豪華キャストが加わり、物語に厚みと広がりを与えています。
この作品は、単なるコメディやミステリーではなく、現代社会の空気や人間の感情をユニークな形で映し出す“映画的な実験”とも言える内容です。池松壮亮はその中心に立ち、奇抜な設定の中でも誠実な演技を貫くことで、作品全体のテンポと感情の流れを支えています。
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』での秀吉役
2026年に放送されるNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』で、池松壮亮は豊臣秀吉役に起用されています。物語は、秀吉の弟・豊臣秀長の視点から描かれる戦国時代のサクセスストーリーで、兄弟の絆とそれぞれの人生が交錯する構成となっています。池松壮亮が演じる秀吉は、登場時は藤吉郎という名で、尾張中村の貧しい農家に生まれ育った青年です。
秀吉は、織田信長のもとで頭角を現し、やがて天下統一を果たす人物として描かれますが、今回のドラマでは、弟・秀長との関係性を軸に、野心と人間味が交錯する複雑な人物像が掘り下げられます。池松壮亮が演じる秀吉は、単なる英雄ではなく、弟を戦乱に巻き込む兄としての葛藤や、家族との距離感、時代に翻弄される一人の人間としての側面が強調されています。
これまでの大河ドラマでは、秀吉は豪快で陽気な人物として描かれることが多くありましたが、本作では、静かな野心や内面の揺らぎを持つ秀吉像が期待されています。池松壮亮は、過去に『義経』や『風林火山』などで大河ドラマに出演しており、今回が3度目の出演となります。これまでの繊細な演技経験を活かし、歴史的な人物に新たな解釈を加えることが注目されています。
ドラマの脚本は『半沢直樹』や『下町ロケット』を手がけた八津弘幸が担当し、演出は渡邊良雄らが務めます。物語は、秀長の目線から兄・秀吉の出世と天下統一までの道のりを描きながら、兄弟の絆とその裏にある人間模様を丁寧に紡いでいきます。池松壮亮がどのように秀吉の内面を表現し、歴史の中で生きた人物としての深みを与えるかが、大きな見どころとなっています。
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インタビューから読み取れる演技哲学

池松壮亮の演技に対する姿勢は、台本の読み込みだけにとどまらず、現場の空気や共演者との関係性を深く観察しながら役に向き合う点に特徴があります。近年のインタビューでは、特に“余白”という言葉が印象的に使われており、脚本に書かれていない部分にこそ、人物の感情や物語の機微が宿ると捉えています。
映画『ぼくのお日さま』では、吃音を抱える少年と向き合うスケートコーチ役を演じるにあたり、半年以上にわたってスケートの練習を重ね、実際のコーチたちの内面からヒントを得て役づくりを行いました。その過程で、教えるという行為に込められた思いや、諦めと再生の感覚を丁寧に掬い取って演技に反映させています。
池松壮亮は、役の背景にある“時間”を現出させることを重視しており、たとえ台本に明示されていない過去であっても、身体の動きや沈黙の間にその人物の人生を滲ませるような演技を心がけています。言葉にしない感情を伝えるために、セリフの前に置かれる一呼吸や、視線の揺れ、声にならないイントロ部分にまで意識を向けていることが語られています。
また、撮影現場では、監督やスタッフとの対話を通じて空間の質感や人物の生活感を共有し、灰皿ひとつの配置にまでこだわることで、役の居場所を立体的に構築しています。演じる人物の“幹”をしっかりと作り、その上で自然に生まれる“枝”のような表現を大切にしているため、演技が技術的なものにとどまらず、観客の記憶に残る深みを持っています。
池松壮亮の演技には、取り繕わない誠実さと、役に対する静かな献身が感じられます。その姿勢は、どの作品においても一貫しており、彼がスクリーンに立つだけで、物語の時間や空気が自然と立ち上がるような感覚を生み出しています。
池松壮亮が歩んできた表現の軌跡と現在地
- 池松壮亮は福岡県出身で三人兄弟の末っ子
- 幼少期に劇団活動を経験し俳優の道へ進む
- 映画『ラスト サムライ』で国際的に注目される
- 学業と演技を両立しながら演技力を磨いてきた
- 東京芸術大学で演劇を学び表現の幅を広げた
- 長年所属したホリプロを退所し独立して活動中
- 映画『紙の月』などで複数の映画賞を受賞
- 舞台や朗読劇でも繊細な表現力を発揮している
- 映画『本心』ではAIと人間の関係性を描いた
- 『ベイビーわるきゅーれ』では殺し屋役を演じた
- 『ぼくのお日さま』では静かなコーチ像を体現
- NHKドラマ『昭和16年夏の敗戦』で歴史を演じた
- 『THE オリバーな犬』では幻想的な世界観に挑戦
- 2026年大河ドラマで豊臣秀吉役に抜擢されている
- インタビューでは現場の空気を重視する姿勢がある
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