歌人として活動する鈴掛真は、震災を契機に作家業へ専念し、短歌を通じて社会や人々の心に寄り添う表現を続けています。結社での研鑽や文学賞の受賞、芸術やファッションとのコラボレーション、そしてLGBTQ+への発信など、多彩な活動を展開してきました。短歌をポップカルチャーと融合させる試みは、若い世代にも新しい文化体験を届けています。
【この記事のポイント】
- 東日本大震災を契機に作家業へ専念した経緯
- 短歌結社「短歌人」での活動と受賞歴
- 芸術やファッションとのコラボレーション事例
- LGBTQ+理解を広める発言と社会的意義
鈴掛真は何者?プロフィールと経歴
愛知県春日井市での生い立ち

1986年2月28日、愛知県春日井市で生まれました。自然や文化が身近にある環境で育ち、幼い頃から絵画や舞台、音楽、ファッションなど多様な芸術に触れる機会がありました。こうした体験は、後に短歌やエッセイを紡ぐ際の感性を育てる土台となっています。
春日井市は名古屋市に隣接する地域で、都市的な要素と落ち着いた生活環境が共存しています。その中で育った経験は、日常の中にある感情や風景を言葉にする姿勢へとつながりました。幼少期から言葉に強い関心を持ち、表現することを自然な営みとして受け止めていたことが、後の創作活動に直結しています。
地域の文化的な土壌に支えられながら、学生時代には芸術や文学に親しみ、やがて短歌という表現方法に出会うことになります。春日井市で過ごした時間は、作品に込められた人間らしい感情や社会へのまなざしを形づくる重要な背景となっています。
名古屋学芸大学で短歌に出会う
名古屋学芸大学のメディア造形学部に在学していた2007年、鈴掛真は歌人・天野慶の作品に触れ、大きな衝撃を受けました。その体験がきっかけとなり、短歌を本格的に詠み始めるようになりました。大学生活の中で培った芸術的な感性と、日常の中で感じ取った思いを言葉にする姿勢が、短歌という表現方法に自然に結びついていったのです。
学生時代から短歌結社「短歌人」に所属し、作品を発表する場を得ました。結社での活動は、短歌を学問的にだけでなく実践的に深める機会となり、文学的な基盤を築く重要な経験となりました。仲間との交流や批評を通じて、短歌の持つ多様な可能性を理解し、自身の表現を磨いていきました。
大学での学びは、単なる知識の習得にとどまらず、芸術や文化を横断的に捉える視点を育てました。絵画や舞台、音楽、ファッションなど、幼少期から触れてきた芸術の要素が短歌に融合し、独自のスタイルを形成する土台となっています。名古屋学芸大学での経験は、後の創作活動においても大きな意味を持ち続けています。
コピーライターから歌人へ転身
大学卒業後、広告会社に勤務しコピーライターとして3年間活動しました。広告の世界では、限られた文字数で人の心を動かす表現が求められます。その経験を通じて、言葉の選び方や響きの持つ力を徹底的に磨きました。短いフレーズで印象を残す技術は、後に短歌を詠む際にも大きな役割を果たしています。
コピーライターとして働く中で、日常の中に潜む感情や風景を言葉にすることへの関心が強まりました。広告の仕事は商品やサービスを伝えるためのものでしたが、その過程で「人の心に届く言葉」とは何かを深く考えるようになりました。こうした思索が、短歌という表現方法に自然と結びついていきました。
2011年の東日本大震災をきっかけに、人生の方向性を見直すことになりました。社会の大きな変化を目の当たりにし、自分自身の言葉で人々に寄り添いたいという思いが強まり、広告業界を離れて作家業に専念する決断をしました。以降は短歌やエッセイを中心に活動を広げ、文学の世界で自身の表現を追求しています。
コピーライター時代に培った「言葉を削ぎ落とし、核心を伝える力」は、短歌の世界でも生かされています。広告と文学という異なる分野を経験したことで、日常の感情を鮮やかに切り取る独自のスタイルが形成されました。
東日本大震災を機に作家業へ専念
広告会社でコピーライターとして働いていた時期に、東日本大震災が発生しました。社会全体が大きな衝撃を受ける中で、自分自身の生き方や言葉の意味を改めて考えるようになり、仕事を続けるよりも「創作を通じて人に寄り添うこと」に力を注ぎたいという思いが強まりました。震災を契機に会社を退職し、作家業へ専念する決断をしました。
震災後は短歌やエッセイを中心に活動を広げ、日常の中にある感情や社会の変化を作品に取り込むようになりました。2014年にはフォトエッセイ『好きと言えたらよかったのに。』を出版し、自身のセクシュアリティを公表しました。この作品は個人的な告白であると同時に、社会に存在する多様な人々の生き方を伝えるものとなりました。
その後も短歌やエッセイを通じて、震災を経験した世代としての視点を作品に反映させています。人の心に寄り添う言葉を紡ぐ姿勢は、震災をきっかけに強く根付いたものです。震災によって変化した人生観は、文学活動の方向性を決定づけ、社会的なテーマを扱う作品へとつながっています。
短歌結社「短歌人」での活動

鈴掛真は大学在学中に短歌と出会った後、短歌結社「短歌人」に所属しました。「短歌人」は歴史ある結社で、多くの歌人が所属し、互いに作品を批評し合いながら研鑽を積む場となっています。結社に参加することで、短歌を単なる個人的な表現にとどめず、文学的な伝統の中で位置づけることができました。
結社での活動は、作品を定期的に発表し、他の歌人からの批評を受ける機会を提供しました。こうした交流は、言葉の選び方や表現の幅を広げる大きな助けとなり、短歌の質を高める重要な経験となっています。仲間との切磋琢磨を通じて、短歌を「個人の感情を表すもの」から「社会に共有される文学作品」へと昇華させる視点を得ました。
また、結社での活動は文学賞への挑戦にもつながり、第17回髙瀬賞を受賞する契機となりました。結社の中で培った技術や視点が評価され、歌人としての存在感を確立するきっかけとなったのです。
「短歌人」での経験は、鈴掛真が後に短歌をポップカルチャーと結びつける活動を展開する際にも基盤となりました。伝統的な短歌の世界で培った技術と、現代的な感覚を融合させる姿勢は、この結社での活動から生まれたものです。
ワタナベエンターテインメント所属時代
鈴掛真は文化人としてワタナベエンターテインメントに所属し、文学活動と並行してメディア出演やイベント活動を行いました。芸能事務所に所属することで、文学の枠を超えた幅広い活動の場を得ることができました。テレビやラジオなどのメディアに登場し、短歌やエッセイを通じて自身の考えや作品を広く伝える機会を持ちました。
所属時代には、短歌をポップカルチャーと結びつける試みを積極的に展開しました。SNSやブログで短歌を発表するだけでなく、刺繍短歌「31on」プロジェクトを立ち上げ、言葉と工芸を融合させた新しい表現方法を提示しました。こうした活動は、文学をより身近に感じてもらうための工夫として注目されました。
また、商業的な場面でも短歌を活用し、百貨店の広告コピーやイベントのキャッチコピーを担当しました。文学的な表現を広告やプロモーションに取り入れることで、短歌が現代社会に生きる表現であることを示しました。芸能事務所に所属していたことで、文学とエンターテインメントの両面を横断する活動が可能となり、歌人としての存在感を広げる契機となりました。
所属期間を通じて、文学を専門とする活動だけでなく、社会や文化に広く関わる姿勢を示し続けました。事務所との契約は2025年に満了しましたが、その間に築いた経験は、現在の活動にも大きな影響を与えています。
第17回髙瀬賞受賞の背景
鈴掛真は2018年に第17回髙瀬賞を受賞しました。この賞は短歌結社「短歌人」に所属する歌人を対象にしたもので、若手歌人の才能を評価する場として知られています。受賞作は「つめたい手」という連作で、人間関係の繊細な感情を短歌に込めた作品でした。日常の一瞬を切り取る視点と、言葉の響きに宿る余韻が高く評価されました。
授賞式は浜松で行われ、同時受賞者や結社の仲間たちと交流する機会にもなりました。副賞として贈られたガラス牌には表題歌が刻まれ、作品そのものが形として残る特別な記念となりました。受賞の瞬間は、これまで積み重ねてきた創作活動が認められた実感をもたらし、今後の活動への大きな励みとなりました。
この受賞は、広告業界から文学の世界へと転身した歩みを確かなものにし、歌人としての存在感を広く知らしめる契機となりました。短歌を「ポップスとしての表現」として発信する姿勢や、SNSやブログを通じて短歌を広める活動も注目されるようになり、文学と現代文化をつなぐ役割を担うきっかけとなったのです。
髙瀬賞の受賞は、鈴掛真が短歌を通じて社会や人々の心に寄り添う活動を続ける上で、大きな転機となりました。文学的な評価を得たことで、後の著作や講演活動にもつながり、歌人としての道をさらに広げる基盤を築いた出来事でした。
芸術やファッションとの関わり
鈴掛真は短歌の世界にとどまらず、芸術やファッションとのコラボレーションを積極的に展開してきました。幼少期から絵画や舞台、音楽、ファッションなど多様な芸術に触れてきた経験が、創作活動の幅を広げる基盤となっています。短歌を「文学作品」としてだけでなく、視覚的な表現や日常の文化と結びつけることで、新しい形の発信を試みています。
代表的な活動のひとつが「刺繍短歌プロジェクト『31on』」です。これは短歌を布に刺繍することで、言葉を視覚的かつ触覚的に表現する試みです。短歌を紙の上だけでなく、身近なアイテムに落とし込むことで、日常生活の中に文学を取り入れる新しいスタイルを提示しました。こうした活動は、ファッションや工芸と文学を融合させるユニークな取り組みとして注目されています。
また、百貨店の広告コピーやイベントのキャッチコピーを手がけるなど、商業的な場面でも短歌や言葉の力を活用しました。文学的な表現を広告やファッションの領域に持ち込むことで、言葉が持つ美しさや余韻を広く伝える役割を果たしています。
さらに、SNSやブログを通じて短歌を発表し、現代的なメディアと結びつける活動も行っています。ファッションやアートの分野と連携することで、短歌を若い世代に届ける工夫を続けており、文学をより身近に感じてもらうための試みとして評価されています。
芸術やファッションとの関わりは、鈴掛真が短歌を「ポップスとしての表現」と位置づける姿勢とも深く結びついています。伝統的な文学の枠を超え、現代文化と融合させることで、短歌の可能性を広げる活動を続けています。
鈴掛真は何者?作品と社会的意義
『好きと言えたらよかったのに。』でのカミングアウト

2012年に刊行されたエッセイ集『好きと言えたらよかったのに。 世界で一番せつない62のメッセージ』は、鈴掛真にとって大きな転機となった作品です。この本の中で、自身が同性愛者であることを公表しました。恋愛における切なさや葛藤を短歌やフォトエッセイの形で綴り、個人的な思いを社会に向けて発信する場となりました。
作品には、片思いの甘さや苦しさ、届かない想いの痛みが短い言葉で表現されています。写真と短歌を組み合わせることで、視覚的にも感情的にも読者に強く訴えかける構成となっています。恋愛の普遍的な感情を描きながらも、同性への想いを率直に表現することで、読者にとって新しい視点を提供しました。
この本は、単なる恋愛エッセイではなく、社会的な意味を持つ作品として受け止められました。同性を好きになることへの不安や孤独を描きながらも、その感情を肯定的に捉える姿勢が、多くの読者に共感を呼びました。高校生や大学生、社会人など幅広い世代から「自分の気持ちを代弁してくれているようだ」「心に響いた」という声が寄せられ、読者の心に深く残る作品となりました。
鈴掛真にとって、この作品でのカミングアウトは、文学活動を通じて社会に自分の存在を示す重要な一歩でした。以降の著作や講演活動でも、LGBTQ+に関するテーマを積極的に取り上げ、理解を広める活動へとつながっています。『好きと言えたらよかったのに。』は、個人的な告白であると同時に、社会的な対話を生み出す契機となった作品です。
『ゲイだけど質問ある?』が広げた議論
2018年に刊行された『ゲイだけど質問ある?』は、鈴掛真が自身の経験をもとに社会に存在する素朴な疑問や偏見に答える形で構成された一冊です。同性を好きになることは特別なことではなく、日常の一部であるという視点を、短歌やエッセイを交えながら伝えています。
本書では「いつゲイだと自覚したのか」「同性愛は趣味なのか」「心は女性なのか」といった、世間で繰り返し問われる質問に率直に答えています。さらに「アウティングとは何か」「同性愛者は生産性がないのか」といった社会的なテーマにも触れ、誤解や偏見を解きほぐす内容となっています。こうした問いに対して、ユーモアを交えつつも真摯に答える姿勢が読者の心を引きつけました。
短歌を織り交ぜながら語られる点も特徴的で、恋愛の切なさや喜びを短い言葉で表現することで、議論に温かみを加えています。例えば「LOVEじゃなく 恋と愛とを 別々に 話せる国が あってよかった」という短歌は、恋愛や愛情の多様な形を肯定する象徴的な一節として紹介されています。
この本は、LGBTQ+に関する入門書としても位置づけられ、読者が身近な存在として理解を深めるきっかけとなりました。特に若い世代や教育現場で取り上げられることが多く、社会的な議論を広げる役割を果たしました。偏見を正すだけでなく、同性を好きになることを自然な感情として描いた点が、多様性を尊重する社会の形成に寄与しています。
『ゲイだけど質問ある?』は、文学作品でありながら社会的な対話を促す書籍として、多くの人々に影響を与えました。鈴掛真が「オープンリーゲイ」の歌人として活動する姿勢を示したことで、読者にとって安心感や共感を得られる存在となり、議論を広げる契機となったのです。
歌集『愛を歌え』に込めたテーマ
2019年に刊行された歌集『愛を歌え』は、鈴掛真にとって初めての本格的な歌集であり、愛や人間関係を中心に据えた作品集です。日常の中で生まれる感情を短歌に凝縮し、恋愛の喜びや切なさ、孤独や希望といった多様な感情を言葉に乗せています。
収録された短歌には、恋人との親密な瞬間や別れの痛み、日常の風景に潜む感情などが描かれています。例えば「言葉などいらないとして くちづけをする瞬間は誰しも黙る」という作品は、愛の本質を静かな時間の中に表現しています。また「『愛してる』言葉に色があったなら 世界は同じ色をしている」という短歌は、愛が人々をつなぐ普遍的な力であることを示しています。
この歌集は、愛を単なる恋愛感情として描くだけでなく、人と人との関わり全体をテーマにしています。友人や家族との絆、社会の中での孤独や連帯感など、幅広い人間関係が短歌に込められています。日常の中で誰もが抱く感情を切り取ることで、多くの読者が共感できる作品となりました。
帯文を寄せた俵万智は「どうしようもなくピュアで、かぎりなくセクシー」と評しており、短歌の持つ濃密な感情表現が高く評価されています。文学的な深みと現代的な感覚を併せ持つこの歌集は、短歌を若い世代にも身近に感じさせる役割を果たしました。
『愛を歌え』は、愛をテーマにしながらも、人生のさまざまな局面を映し出す作品集です。日常の感情を鮮やかに切り取ることで、読者に「自分自身の愛の形」を考えるきっかけを与える一冊となっています。
LGBTQ+理解を広める活動と発言
鈴掛真は、歌人としての活動に加えて、LGBTQ+への理解を広めるための講演や執筆を積極的に行っています。自身がゲイであることを公表し、作品や発言を通じて「多様性を概念ではなく個人として捉えてほしい」という視点を繰り返し伝えています。これは、社会の中で「LGBTQ+」という言葉が広まる一方で、当事者が抱える現実的な課題や誤解が残っていることを踏まえた活動です。
講演では、自身のカミングアウトの経験や、職場や学校での人間関係における課題を具体的に語り、参加者に「偏見をなくすためにできること」を考えるきっかけを提供しています。特に「アウティング」の危険性や、無意識の差別が人を傷つけることについて触れ、安心して自分らしく生きられる社会の必要性を訴えています。
執筆活動では、著書『ゲイだけど質問ある?』をはじめ、短歌やエッセイを通じて同性を好きになることの自然さを表現しています。恋愛や人間関係をテーマにした作品は、読者にとって「特別なものではなく日常の一部」として理解するきっかけとなりました。こうした作品は、教育現場や公共の場でも取り上げられ、若い世代にとって多様性を考える入口となっています。
また、社会的な議論が高まる中で「生産性」という言葉で人を評価する風潮に対しても発言し、LGBTQ+だけでなく高齢者や障害者など、あらゆる人を数値で測ることの危うさを指摘しました。人間を「生産性」で判断するのではなく、存在そのものを尊重するべきだという姿勢は、多くの人に共感を与えています。
鈴掛真の活動は、文学を通じて社会に働きかける形をとりながら、当事者の声を広く届ける役割を果たしています。講演や執筆を通じて「理解したつもり」ではなく、実際に人と人との関わりの中で多様性を尊重することの大切さを伝え続けています。
メディア出演や講演での発信

鈴掛真は歌人としての活動を広げる中で、テレビやラジオなどのメディアに出演し、短歌や社会的テーマを広く伝えてきました。文学の枠を超えて多くの人々に言葉を届ける場を持つことで、短歌を知らない層にもその魅力を伝える役割を果たしています。番組では自身の作品を朗読するだけでなく、短歌を通じて日常の感情や社会的な課題を語り、視聴者に新しい視点を提供しました。
講演活動にも積極的で、学校や公共施設、企業などさまざまな場で登壇しています。講演では短歌の創作過程や言葉の持つ力について語るとともに、LGBTQ+に関する自身の経験を交えながら「多様性を尊重する社会のあり方」について発信しています。参加者にとっては文学的な学びだけでなく、社会的な課題を考えるきっかけとなる内容が多く含まれています。
また、イベントやトークショーでは、短歌をポップカルチャーと結びつける試みを紹介し、若い世代にとっても親しみやすい形で文学を届けています。SNSやブログでの発信と連動させることで、講演やメディア出演をきっかけに作品に触れた人々が継続的に短歌に親しめるよう工夫しています。
こうした活動は、文学を専門的な領域に閉じ込めるのではなく、社会に開かれた形で発信する姿勢を示しています。メディア出演や講演を通じて、短歌を現代社会に生きる表現として位置づけ、多様な人々に言葉の力を届け続けています。
noteやブログでの短歌発表
鈴掛真は、紙の出版物だけでなく、インターネット上でも積極的に短歌やエッセイを発表しています。代表的な場が note と アメーバブログ「さえずり短歌」 で、そこでは新作短歌や連作短歌を定期的に公開し、読者と直接交流する場を持っています。デジタル媒体を活用することで、短歌をより身近に感じてもらえるよう工夫しています。
noteでは、雑誌に寄稿した作品や未収録の新作短歌を公開し、日常の感情や社会的テーマを短い言葉に凝縮しています。例えば「マクロモード」や「記憶のパズル」といった連作では、恋愛や日常の風景を切り取った短歌が並び、読者にとって共感や発見を与える内容となっています。短歌の発表だけでなく、制作の背景や思いを添えることで、作品の理解を深める工夫も見られます。
アメーバブログ「さえずり短歌」では、日常の出来事や創作の裏側を交えながら短歌を紹介しています。新刊情報やイベント告知も発信され、読者が活動の最新情報を得られる場として機能しています。さらに、他の歌人との対談や短歌コンテストの紹介などもあり、短歌を広い文化的文脈で楽しめるようになっています。
こうしたオンラインでの発表は、読者がコメントやリアクションを通じて作品に参加できる点が特徴です。紙の出版物では一方通行になりがちな文学活動を、双方向の交流へと広げる役割を果たしています。SNSやブログを通じて短歌を発表することで、文学をより多くの人に届け、世代や地域を超えたつながりを生み出しています。
刺繍短歌「31on」プロジェクト
鈴掛真が展開している「31on(サンジュウイチオン)」は、短歌と刺繍を組み合わせた独自の創作プロジェクトです。短歌の文字を布に刺繍することで、言葉を視覚的かつ触覚的に表現し、文学と工芸を融合させています。短歌は通常紙面やデジタルで読むものですが、このプロジェクトでは「身近に持ち歩ける文学」として新しい形を提示しています。
刺繍短歌は、ひとつひとつ手作業で制作され、布の質感や糸の色合いが短歌の内容と響き合うように工夫されています。例えば、恋愛をテーマにした短歌には柔らかな色合いが選ばれ、自然や季節を詠んだ作品には鮮やかな色彩が用いられるなど、言葉とビジュアルの調和が意識されています。これにより、短歌が持つ感情のニュアンスを視覚的に補強し、読む人に新しい体験を提供しています。
「31on」という名前は、短歌が持つ定型「五・七・五・七・七」の合計三十一音に由来しています。短歌の根本的な形式をそのままプロジェクト名に取り入れることで、文学的な伝統と現代的な表現をつなぐ意図が込められています。
この活動は、文学を工芸やファッションの領域へ広げる試みとして注目されました。刺繍作品は展示や販売も行われ、短歌を「読む」だけでなく「身につける」「飾る」といった新しい楽しみ方を提示しています。従来の短歌の枠を超え、生活の中に自然に溶け込む表現として広がりを見せています。
「31on」プロジェクトは、短歌を現代文化に結びつける活動の一環であり、鈴掛真が掲げる「短歌のスタンダード化」「ポップスとしての短歌」という理念を具体化したものです。文学をより多くの人に届けるための工夫として、刺繍短歌は新しい可能性を示しています。
現代短歌とポップカルチャーの融合
鈴掛真は「短歌のスタンダード化」「ポップスとしての短歌」を掲げ、現代短歌をポップカルチャーと結びつける活動を続けています。従来の文学的な枠組みにとどまらず、SNSやブログ、YouTubeなどのデジタルメディアを活用し、短歌を日常的に楽しめる表現へと広げています。これにより、若い世代にとって短歌が身近な文化として受け入れられるようになりました。
具体的な取り組みとして、SNSでの短歌発表は大きな役割を果たしています。短い言葉で感情を表現する短歌は、Twitterやnoteといったプラットフォームとの相性が良く、日常の一コマや社会的テーマを即座に共有できる形で発信されています。こうした活動は、短歌を「読む文学」から「参加する文化」へと変化させ、読者との双方向的な交流を可能にしました。
また、ファッションや工芸とのコラボレーションも行い、刺繍短歌「31on」プロジェクトでは短歌を布に刺繍することで、文学を視覚的・触覚的に楽しむ新しいスタイルを提示しました。これにより、短歌は紙面だけでなく、生活の中に取り入れられる表現として広がりを見せています。
さらに、短歌を映像作品に取り入れる試みも行われています。ショートフィルム「ラストデート」では短歌を脚本や映像に組み込み、文学と映像表現を融合させました。こうした活動は、短歌を現代的なメディアに適応させ、ポップカルチャーの一部として楽しめる形にしています。
イベントや企業とのコラボレーションも積極的で、百貨店のキャンペーンコピーや短歌コンテストを通じて、文学と商業文化を結びつけています。これらの活動は、短歌を若い世代や一般の人々に広く届けるための工夫であり、文化の橋渡し役を担っています。
鈴掛真の取り組みは、短歌を伝統的な文学から現代文化へとつなぐ試みであり、若い世代にとって新しい形で短歌を楽しむきっかけを提供しています。
鈴掛真って何者?記事全体の要点まとめ
- 愛知県春日井市で育ち幼少期から芸術に触れてきた経験が創作の基盤となった
- 名古屋学芸大学在学中に短歌と出会い文学的な表現を深めるきっかけを得た
- コピーライターとして広告業界で言葉を磨き短歌に活かす技術を培った
- 東日本大震災を契機に人生観が変化し作家業に専念する決断をした
- 短歌結社「短歌人」に所属し仲間との交流で作品の質を高めた
- ワタナベエンターテインメント所属時代に文学とエンタメを横断する活動を展開した
- 第17回髙瀬賞を受賞し歌人としての存在感を確立する契機となった
- 芸術やファッションとのコラボで短歌を生活文化に広げる試みを行った
- エッセイ集『好きと言えたらよかったのに。』で自身のセクシュアリティを公表した
- 『ゲイだけど質問ある?』で社会の偏見に答え多様性への理解を促した
- 歌集『愛を歌え』で愛や人間関係をテーマに短歌を展開した
- LGBTQ+理解を広める講演や執筆活動を通じて社会的意義を示した
- メディア出演や講演で短歌と社会的テーマを広く伝える活動を続けた
- noteやブログで短歌を発表し読者との交流をデジタルで広げた
- 刺繍短歌「31on」プロジェクトで文学と工芸を融合させ新しい表現を提示した
- 現代短歌をポップカルチャーと結びつけ若い世代へ文化の橋渡しを担った
▶▶ あわせてこちらの記事もどうぞ






コメント