ローソンのトップとして長く舵を取る竹増貞信が、どのような経験を積み、どんな視点で企業を動かしてきたのかを深く掘り下げます。三菱商事での現場経験や海外での実務、広報や秘書としての経営中枢での時間など、多面的なキャリアが現在の判断力につながっています。さらに、成城石井の会長を兼任しながらグループ全体をどう導いているのかにも触れていきます。
【この記事のポイント】
- 三菱商事で培った現場と経営の両面を理解する視点
- ローソン社長として掲げる店舗の質を重視する方針
- アジアを中心とした海外事業拡大の背景と狙い
- 成城石井会長としての役割とグループ全体への影響
竹増貞信って何者?経歴・出身・三菱商事時代の歩み
大阪府出身で大阪大学経済学部を卒業

竹増貞信は大阪府池田市で生まれ育った人物です。幼い頃から高校まで大阪教育大学附属校に通い、落ち着いた住宅街や自然の多い環境の中で過ごしてきました。通学は徒歩や自転車が中心で、地域の雰囲気に親しみながら日常を送っていたことが、後の価値観にも影響を与えています。
大学は大阪大学経済学部に進学し、経営学を中心に学びました。大学時代も自宅から通っており、地元での生活を続けながら学問に向き合っています。経済や経営の基礎を体系的に学んだ経験は、三菱商事でのキャリア形成や、ローソン社長としての判断軸につながる重要な土台となっています。
池田市での23年間は、地域の祭りや公園での遊びなど、地元に根ざした体験が多く、地域社会とのつながりを自然と感じながら育った時期でもあります。こうした背景が、現在の「地域に寄り添う店舗づくり」を重視する姿勢にも通じています。
三菱商事で畜産部に配属され牛肉輸入に携わる
大学卒業後、竹増貞信は三菱商事に入社し、最初の配属先として畜産部の牛肉課に着任しました。当時の牛肉市場は、輸入自由化の影響で大きく揺れていた時期です。参入する企業が一気に増え、輸入量が急激に膨らんだことで相場が大きく下落し、畜産部は厳しい状況に置かれていました。
入社して間もない時期に、牛肉課は大きな赤字を抱えて事実上の解散状態となり、竹増は子会社の牛肉販売会社へ一人で出向することになります。そこでは、在庫として残っていた牛肉を売り切る役割を任され、若手ながら現場の最前線で販売業務に向き合う日々が続きました。
通常であればベテラン社員が担うような業務を、入社3〜4年目で任されることは珍しく、竹増にとっては大きな試練でもありました。スーパーでの販売応援に入ることもあり、現場で顧客と直接向き合う経験を積んだことで、後のキャリアに通じる「現場を理解する姿勢」が育まれています。
畜産部での経験は、商社のダイナミックな事業環境と、変化の激しい市場で働く厳しさを体感する貴重な時間となりました。市場の急変や部署の閉鎖といった大きな変化に直面しながらも、与えられた役割を果たすために動き続けた経験が、その後の判断力や行動力の基盤になっています。
Indiana Packers Corporationへの出向経験
竹増貞信は三菱商事で畜産関連の業務を経験した後、アメリカ・インディアナ州にある豚肉加工会社 Indiana Packers Corporation に出向しています。ここは三菱商事のグループ企業で、豚肉の処理から加工、販売までを一貫して行う大規模な食品メーカーです。
竹増はこの会社で、最高経営責任者の補佐という立場を任されました。現地では、製造ラインの状況を把握したり、品質管理の仕組みを学んだり、スタッフとのコミュニケーションを取りながら業務を進める必要がありました。日本とは文化も働き方も異なる環境で、日々の判断や調整が求められる場面が多く、自然と視野が広がる経験になっています。
また、食品加工の現場では需要の変動やサプライチェーンの調整など、スピード感のある対応が欠かせません。竹増は3年間の勤務を通じて、現場の動きを理解しながら経営判断に関わる力を身につけています。この経験は、後にローソンで海外事業を担当する際にも大きな支えとなり、異文化環境でのマネジメント力や柔軟な判断力につながっています。
広報部での勤務と社長業務秘書としての役割
アメリカでの勤務を終えて帰国した竹増貞信は、三菱商事の広報部に異動し、ここで5年間を過ごしています。広報部では、企業の取り組みを社会に伝える仕事に携わり、社内外の動きを幅広く把握しながら業務を進める日々が続きました。情報発信に関わる立場は、会社全体の流れを理解する必要があり、視野が大きく広がる経験となっています。
その後、総務部と経営企画部を兼務しながら、社長業務秘書を務める役割に就きます。経営トップの近くで働く立場は、企業運営の中心に触れる機会が多く、日々の判断や意思決定の背景を知る貴重な時間となりました。社長のスケジュール管理や情報整理だけでなく、経営に必要な資料を整える場面も多く、組織全体を俯瞰して考える力が自然と身についていきます。
この時期に得た経験は、後にローソンで経営に携わる際の大きな基盤となり、現場と経営の両方を理解した判断につながっています。企業の中心で働いた時間は、竹増のキャリアにおいて重要な転換点となりました。
三菱商事を退社しローソン副社長へ転身

竹増貞信は、三菱商事で広報や経営企画、社長業務秘書といった役割を経験した後、2014年に三菱商事を離れ、ローソンへと活動の場を移しました。同年には代表執行役員副社長に就任し、企業の中核を担う立場として新たなキャリアを歩み始めています。
ローソンでは、法人営業本部長やローソンマートの担当など、複数の領域を同時に任される立場に立ちました。法人営業では企業との取引や店舗展開の方向性を整える役割を担い、現場の状況を踏まえながら事業全体を見渡す視点が求められています。また、ローソンマートの担当としては、日常の買い物に寄り添う小型店舗の運営にも関わり、地域に根ざした店舗づくりに触れる機会が増えました。
三菱商事で培った現場理解と経営視点の両方を活かしながら、ローソンの事業を多角的に支える存在となっていきます。この時期の経験は、後に社長へ就任する際の基盤となり、組織全体を俯瞰しながら判断する力をさらに強める時間となりました。
2016年にローソン社長へ就任した背景
竹増貞信がローソンの代表取締役社長に就任したのは、2016年のことです。前任の玉塚元一が会長へ移るタイミングで、その後任として社長の座を引き継ぎました。竹増は三菱商事からローソンに移って以降、法人営業や小型店舗事業など複数の領域を担当し、事業全体を見渡す立場で経験を積んでいました。こうした幅広い業務に携わった実績が、社長就任につながっています。
社長就任後は、国内外の事業を統括する役割を担い、海外展開や新規事業の推進にも深く関わっています。また、翌年にはマーケティング本部長も兼務し、商品戦略やブランドづくりにも直接関わるようになりました。店舗数の拡大だけでなく、一店一店の質を高める方針を掲げ、現場の声を重視した経営を進めています。
さらに、海外事業や成城石井などのグループ会社も管掌し、ローソングループ全体の方向性を整える役割も担っています。社長就任は単なるポジションの変化ではなく、これまでの経験を生かして企業全体を動かす立場へと進んだ大きな転機となりました。
成城石井の取締役会長も務める現在の役割
竹増貞信はローソンの社長として事業全体を統括する一方で、2024年から成城石井の取締役会長も務めています。成城石井は食品に強みを持つ企業で、質の高い商品づくりや独自の仕入れ体制で知られています。竹増が会長に就いたことで、ローソングループとしての連携がより強まり、食品事業と小売事業の両面からグループ全体を支える体制が整いました。
成城石井では2024年に社長交代が行われ、新しい経営体制がスタートしています。竹増は会長としてその変化を支え、企業としての方向性を安定させる役割を担っています。ローソンで培った経営経験や、海外事業を含む幅広い視点を持つことから、グループ全体の成長を見据えた判断が求められる立場です。
食品の専門性を持つ成城石井と、全国に店舗網を持つローソンの強みを組み合わせることで、グループとしての競争力を高める取り組みが進んでいます。竹増はその中心に立ち、両社の価値を高めるための役割を果たしています。
竹増貞信って何者?ローソン社長としての方針と人物像
店舗数より質を重視する経営方針

竹増貞信は、ローソンの経営において「店舗数を増やすこと」よりも「一つひとつの店舗の質を高めること」を大切にしています。コンビニ業界は全国に多くの店舗があり、どの企業も競争が激しい状況にあります。その中で竹増は、地域の暮らしに寄り添った店づくりこそが、長く支持されるために欠かせないと考えています。
ローソンでは、地域ごとの生活スタイルに合わせた店舗運営が進められています。たとえば、買い物が不便になりやすい地域では生鮮食品や冷凍食品を充実させたり、地域の人が集まれるようにイートインスペースを広く取ったりと、地域の事情に合わせた工夫が行われています。こうした取り組みは、単に商品を並べるだけではなく、地域の暮らしを支える存在になることを目指したものです。
また、全国チェーンとして一定の品質を保つことも求められるため、竹増は「全国で同じ安心感を提供すること」と「地域に合わせた柔軟な店づくり」の両立を重視しています。このバランスを取りながら、店舗の質を高める方針を続けている点が特徴です。
店舗数を追うのではなく、地域のニーズに応えられる店舗を増やしていく姿勢は、ローソンの経営方針として定着しつつあります。竹増の考え方は、これからのコンビニがどのように地域と関わっていくべきかを示す一つの方向性となっています。
熊本地震で示した加盟店への姿勢
竹増貞信は、ローソンの経営において「店舗数をどれだけ増やすか」よりも、「一つひとつの店舗がどれだけ地域に役立つ存在になれるか」を重視しています。コンビニ業界は競争が激しく、全国に多くの店舗が並ぶ中で、単に数を増やすだけではお客様に選ばれ続けることが難しくなっています。こうした状況の中で竹増は、地域の暮らしに寄り添った店づくりこそが、長く支持されるために欠かせないと考えています。
ローソンでは、地域ごとの生活スタイルに合わせた店舗運営が進められています。買い物がしづらい地域では生鮮食品や冷凍食品を充実させたり、地域の人が集まれるようにイートインスペースを広く取ったりと、地域の事情に合わせた工夫が行われています。こうした取り組みは、単に商品を並べるだけではなく、地域の暮らしを支える存在になることを目指したものです。
一方で、全国チェーンとして一定の品質を保つことも求められます。竹増は「全国で同じ安心感を提供すること」と「地域に合わせた柔軟な店づくり」の両立を大切にしており、このバランスを取りながら店舗の質を高める方針を続けています。
店舗数を追うのではなく、地域のニーズに応えられる店舗を増やしていく姿勢は、ローソンの経営方針として定着しつつあります。竹増の考え方は、これからのコンビニが地域とどう関わっていくべきかを示す一つの方向性となっています。
海外事業拡大とアジア中心の店舗展開
ローソンは国内市場が成熟する中で、海外事業を成長の柱として位置づけています。特にアジア地域での展開を強化しており、中国を中心に店舗数を大きく伸ばしています。中国では1990年代から進出しており、近年は出店エリアを広げながら着実に店舗数を増やし続けています。都市部だけでなく、地方都市にも展開が進み、存在感が高まっています。
アジアでは中国に加えて、タイ、フィリピン、インドネシアなどでも店舗網を拡大しています。これらの国々では経済成長が続き、コンビニ需要が高まっていることから、ローソンにとって大きな成長機会となっています。現地の食文化や生活スタイルに合わせた商品やサービスを取り入れることで、地域に根ざした店舗運営を進めています。
ローソンは海外店舗数の拡大を明確な目標として掲げており、将来的には海外全体で1万店規模を目指す計画も示されています。海外事業の強化は、国内外のバランスを取りながら企業全体の成長を支える重要な戦略となっています。
デジタル化と物流改革への取り組み
ローソンは、店舗運営の負担を減らし、効率を高めるためにデジタル化を積極的に進めています。人手不足が深刻化する中で、店舗の作業をどれだけ軽くできるかが大きな課題となっており、その解決に向けてさまざまな技術が導入されています。
店舗では、AIを活用した発注システムが導入され、天候や販売実績、在庫状況などのデータをもとに最適な発注量を自動で提案する仕組みが整えられています。これにより、従来は経験や勘に頼っていた作業が効率化され、食品ロスの削減にもつながっています。また、店内業務の一部ではロボットの活用も進められ、品出しや清掃などの作業をサポートする取り組みが始まっています。
物流面でも改革が進められています。配送回数を見直し、従来の1日3回から2回へと切り替える取り組みが広がっています。これにより、配送車両の稼働を抑えつつ、CO₂排出量の削減やコスト抑制につながっています。さらに、AIを使って配送ルートを最適化する仕組みも導入され、効率的な物流網の構築が進められています。
異業種との協力も進んでおり、物流の空き時間を活用して他社の商品を配送する取り組みも始まっています。これにより、トラックの積載効率が高まり、物流全体の負担を軽減する効果が期待されています。
デジタル化と物流改革は、店舗運営の負担を減らすだけでなく、環境負荷の軽減やコスト削減にもつながる重要な取り組みとして位置づけられています。
三菱商事出身者としてのマネジメント観

竹増貞信は、三菱商事での多様な経験を通じて、現場と経営の両方を理解する独自のマネジメント観を形成しています。若手時代には畜産部での牛肉輸入業務に携わり、市場の急変や部署の閉鎖といった厳しい状況に直面しました。現場での販売業務を任されるなど、実務の最前線で働く経験が多く、現場の苦労や動きを肌で理解する姿勢が育まれています。
その後、アメリカの食品加工会社で経営者の補佐として働いた経験は、異文化の中で組織を動かす視点を身につける機会となりました。製造現場のオペレーションから経営判断まで幅広く関わり、現場と経営の距離を縮める感覚が養われています。
帰国後は広報部での情報発信業務や、社長業務秘書として経営トップの近くで働く経験を積みました。企業の内外をつなぐ広報の仕事や、トップの意思決定を支える秘書業務は、経営全体を俯瞰する視点を磨く重要な時間となっています。
こうした現場・海外・経営中枢という多層的な経験が組み合わさり、竹増のマネジメントは「現場の声を理解しながら、経営としての判断を下す」というバランスの取れたスタイルへとつながっています。ローソンの経営においても、現場の実情を踏まえた判断や、組織全体を見渡す視点が一貫して重視されています。
47歳で社長に就任した理由と背景
竹増貞信は、三菱商事での多様な経験を通じて、現場と経営の両方を理解する独自のマネジメント観を形づくっています。若手時代には畜産部で牛肉輸入に携わり、市場の急変や部署の閉鎖といった厳しい状況に向き合いました。現場で販売業務を任されることもあり、実務の最前線で働く経験が、現場の動きや苦労を理解する姿勢につながっています。
その後、アメリカの食品加工会社で経営者の補佐として働いた経験は、異文化の中で組織を動かす視点を身につける機会となりました。製造現場のオペレーションから経営判断まで幅広く関わり、現場と経営の距離を縮める感覚が養われています。
帰国後は広報部での情報発信業務や、社長業務秘書として経営トップの近くで働く経験を積みました。企業の内外をつなぐ広報の仕事や、トップの意思決定を支える秘書業務は、経営全体を俯瞰する視点を磨く重要な時間となっています。
こうした現場・海外・経営中枢という多層的な経験が組み合わさり、竹増のマネジメントは「現場の声を理解しながら、経営としての判断を下す」というバランスの取れたスタイルへとつながっています。ローソンの経営においても、現場の実情を踏まえた判断や、組織全体を見渡す視点が一貫して重視されています。
次期社長候補が注目される現在の状況
ローソンでは、近年の経営体制の変化により、次期社長の行方に関心が高まっています。2024年には大きな資本構造の変化があり、三菱商事に加えてKDDIが議決権の半数を持つ体制となりました。この共同経営体制のもとで、ローソンのトップ人事はこれまで以上に注目されるテーマとなっています。
竹増貞信は、ローソンの代表取締役社長として長く経営を担い、2024年からは成城石井の取締役会長も兼任しています。グループ全体を見渡す立場にあることから、今後の経営体制の方向性を左右する存在として注目が集まっています。
一方で、次期社長候補として名前が挙がる人物も複数存在しています。ローソンの経営は三菱商事とKDDIの共同体制となったため、両社の出身者が候補に挙がる可能性が高いと見られています。実際に、三菱商事出身の幹部や、KDDIからローソンに加わった経営陣が重要なポジションに就いており、次のトップを担う人材として注目されています。
また、ローソンは組織変更や人事異動を継続的に行っており、新しい役員や執行役員が次々と登用されています。こうした動きは、将来の経営体制を見据えた布陣づくりの一環と考えられ、次期社長の選定に向けた準備が進んでいることを示しています。
竹増が成城石井の会長を兼任していることもあり、グループ全体のバランスを踏まえた人事が行われる可能性が高く、今後の動向は引き続き注目されています。
竹増貞信とは何者?経営姿勢と歩みの総まとめ
- 三菱商事で現場と経営の両面を経験し判断軸を形成した人物
- 畜産部での苦労が現場理解を重視する姿勢につながっている
- 海外企業での勤務経験が多角的な視点を育てる基盤となった
- 広報や秘書業務で企業全体を俯瞰する力を身につけている
- 2014年にローソンへ移り経営中枢で重要な役割を担ってきた
- 法人営業や小型店舗事業を通じ事業全体を把握する立場に立った
- 2016年に社長へ就任し国内外の事業を統括する責任を負っている
- 店舗数より質を重視し地域に寄り添う運営方針を掲げている
- アジアを中心に海外展開を進め成長戦略の柱として位置づけた
- デジタル化を推進し店舗運営の負担軽減と効率化を進めている
- 物流改革に取り組み環境負荷とコストの両面で改善を図っている
- 成城石井の会長を兼任しグループ全体の価値向上に関わっている
- 三菱商事出身者として現場と経営をつなぐ独自の視点を持つ
- 経営体制の変化により次期社長候補として注目が集まっている
- 多様な経験を背景にローソングループの方向性を支える存在となる
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